【歯の神経を守る大切な治療】直接覆髄（ちょくせつふくずい）について

こんにちは。大森歯科医院です。
本日は、むし歯が深い場合に行うことのある 「直接覆髄（ちょくせつふくずい）」という治療法 について、分かりやすくご説明いたします。

「できれば神経は残したい」
「神経を抜くと歯が弱くなると聞いたけど本当？」

そのような疑問をお持ちの方に、ぜひ知っていただきたい内容です。

■ 直接覆髄とは？

直接覆髄とは、むし歯の治療中に“歯の神経（歯髄）”が一部露出した際に、特殊なお薬を直接置いて神経を保護し、できるだけ神経を残すための治療です。

近年は歯の保存を重視する歯科医療の進歩により、
“神経を抜かずに残す治療” の重要性が高まってきています。

■ なぜ神経を残すことが大切なのか？

歯の神経には以下のような役割があります。

• 歯に血流や栄養を届ける

• 歯をしなやかに保ち、割れにくくする

• むし歯に対して天然の防御反応を起こす

そのため神経を抜いてしまうと、

• 歯が割れやすくなる

• 将来的に再治療や抜歯のリスクが高まる
  など、歯の寿命に影響することがあります。

可能であれば 神経を残す方が圧倒的にメリットが大きい のです。

■ 直接覆髄が適応できるケース

以下の条件がそろうと成功率が高くなります。

• 強い痛みが出ていない

• 神経が健康または軽度の炎症に留まっている

• 出血がきれいに止まる

• 清潔な環境下（ラバーダムなど）で治療できる

• 若年の場合は治癒力が高く成功率が上がる傾向

すべてのむし歯で行えるわけではなく、歯の状態に応じて慎重な判断が必要です。

■ 適応が難しいケース

次のような場合は別の治療（根管治療など）が必要となる可能性があります。

• ズキズキとした自発痛がある

• 夜眠れないほどの痛みがある

• 出血がなかなか止まらない

• 神経の感染が広がっている

• 歯が大きく割れて神経が露出している

■ 使用する材料について（MTAセメント）

直接覆髄では、現在 MTA（エムティーエー）セメント が広く使用されています。

• 神経を保護する力が高い

• むし歯菌が増えにくい環境を作る

• 長期的に安定しやすい

といった特徴があり、従来の材料よりも高い成功率が期待できます。

■ 治療の流れ

当院では以下のようなステップで治療を行います。

1. むし歯の部分を丁寧に除去

2. 神経の露出部を確認

3. しっかり止血し、感染を最小限にする

4. MTAセメントを露出部に置く

5. その上から保護層を作る

6. 詰め物（または仮詰め）をして終了

治療時間は30〜60分程度です。

■ 成功率の目安

学術的な報告では、
MTAを使用した直接覆髄の成功率は約80〜90％ と非常に高い数値が示されています。
ただし、歯の状態や年齢、治療環境によって変動します。

■ 治療後の注意点

• 治療後しばらくは冷たいもの・熱いものがしみる場合があります

• 一時的な痛みは出ることがあります（数日〜数週間で改善することが多いです）

• 痛みが強くなる、ズキズキする場合は早めの受診をお願いします

神経を守る治療だからこそ、治癒の途中での変化に気づくことが大切です。

■ まとめ：神経を守ることは「歯を長持ちさせる第一歩」

直接覆髄は
「神経をできるだけ残し、歯の寿命を延ばすための治療」 です。

すべてのケースで適応できるわけではありませんが、条件が整えば非常に有効な選択肢になります。

むし歯が深い場合でも、
「本当に神経を抜く必要があるのか」
「神経を残す方法はないのか」
気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。